街頭募金の功罪(1)「死ぬ死ぬ詐欺」


 去年の年末、スーパーに行ったら街頭募金をやっていました。

なんだか子供が10人ぐらいで声を張り上げてて、アフリカだかカンボジアだか忘れましたが募金を呼びかけていました。

それを数人の監督者らしき大人がみていました。皆さんはこういうときどうしますか?僕は募金しませんでした。

 現代の日本という国は豊かな方ですが、上野駅に行けばホームレスがたくさんいます。

金がなくて病院にいけずに死んでしまう人たちがたくさんいます。国と地方の財政は借金まみれで増税をしないとどうしようもない、というのが専門家たちの一致した見解です。

 

 最近、「○○ちゃんを救う会」というのが多く存在します。

おととしの陽佑ちゃんを救う会では、134,113,100円を集め、105,808,311円を使ったそうです。

その中には米国渡航費・滞在費・医療費等送金にも4,238,000円使われています。

すなわち手術代だけでなく、アメリカでのホテル代等の滞在費も自腹ではなく、募金でまかなったようです。

また同HPには、「新居に移った」「新しいおうち」との記述があり、どうやら家を新築したようなのです。募金は3000万円余りました。

HPでは「残高が出た場合は、帰国後しばらく陽佑ちゃんの様態が十分に安定するまで、会で保管しておきます。」と記述されていますが、本当でしょうか?

 最も有名になったのは去年のあやかちゃんを救う会でしょう。

 

父親が鹿島アントラーズのサポーターであることをきっかけに、Jリーグチームなどから多額の寄付を集め、目標金額の1億3000万円に対してなんと2億1000万円を集めました。

すなわち、8000万円余っています。これに対し、同HPでは「彩花の不測の事態や手術後の容態変化などに備え、引き続き(中略)募金受付は継続させていただきます」とあります。

8000万円余らせるだけでは満足せず、まだ募金を受け付けるつもりのようです。

 

また同HPでは会員規約の中で「本会は、神達彩花ちゃんのアメリカでの多臓器移植に関わるすべての費用を募金活動で行うことを目的とする」と明記されており、こちらも自費負担は全くゼロのようです。

いまどき健康保険ですら自己負担は3割ですが、彼らの場合ゼロです。

「自分たちは1000万円なら払えるが、残りの1億2000万が払えないので助けてくれ」というのではありません。手術代だけでなく、現地滞在費及び事務局経費に500万円かかっており、現地ホテル代なども募金から支出しています。

 

 そして今年新たに登場したのがななみちゃんを救う会です。

こちらは募金目標額9000万円に達しておらず、まだ進行中の案件です。

さすがにこう何人も出てくると、やはりインパクトが薄れてくるのか、なかなか集まっていないようです。

ところがななみちゃんの新しいところは、「時間がありません!2月末に生きている可能性は1%以下と宣告されています。」と、HPではっきりと期限が明記されていることです。

彼らは期限を設けることですばやく募金を集めようとしているのです。すなわち経済学的に言うと、ビジネスモデルが進化し、古いビジネスモデルを淘汰しようとしているのです。

 某巨大掲示板によると、あやかちゃんの余った8000万円を、ななみちゃんに寄付したらどうか、または貸与したらどうかというメールがあやかちゃんの元に殺到しているにもかかわらず、あやかちゃん側はひたすら無視しているようです。ななみちゃん側からも特に寄付を要請している様子はありません。

 そんなに、その2団体は仲が悪いのでしょうか?しかし、両HPのデザインは非常によく似ています。

そもそも団体名からして、「○○ちゃんを救う会」、HPの上のほうに整然とリンクが並べられ、一番左に「○○ちゃんについて」、右側には、会則、メディア、協力団体、リンクと並べられています。

またななみちゃん側のHPにはおそろいのジャンパーに身を包んだ、いかにも募金慣れした人たちの写真が写っています。

会則も非常に似通っています。すなわち、会の運営が非常に組織的なのです。

ちなみに会則によると、おそろいのジャンパーも募金で買ったようです。素人のボランティアと両親が慣れないことを勉強しながら必死でやってる、そういう素人っぽさが、そういう感じが全くしないのです。

 

この一連の問題を、某巨大掲示板では「募金詐欺」あるいは「死ぬ死ぬ詐欺」と名づけて批判しています。

 あどけない顔の赤ちゃんの背後には、いったいどんな顔をした大人たちがいるのでしょうか?

 

ほとんどの場合、病気の赤ちゃんだけがHPにでかでかと掲載され、両親の顔はどこにも出てきません。

赤ちゃんの背後には、いったいどんな団体がいるのでしょうか?さすがの僕もそこまでは突き止めることができませんでした。

 僕はある程度の判断能力があるのでこのようなことを調べられますが、こういう事情を知らずに募金をしてしまう人が多いのだろうな、と思います。

振り込め詐欺が流行していますが、世の中、ずるがしこい人たちがたくさんいます。自衛のためには知識、情報、判断力が必要な世の中です。

8000万円あればアフリカの子供を何人救えるでしょうか、ホームレスを何人救えるでしょうか。

悪い人が得をする、こういう社会を何とかして変えたいのですが、僕一人の力でどうしたらいいのか分かりません。が、とりあえず多くの人にこの文章を読んでもらいたいです。



 

街頭募金の功罪(2)社会貢献とは

 前回、多額のお金を募金によって集める手法について書きました。その後の経過ですが、ななみちゃんを救う会では、なんともう目標の9000万円を突破し、1億2200万円を集めた模様です。「2月末に生きている可能性は1%以下」と期限を決めて募金者をあせらせる最新のビジネスモデルが功を奏したようです。それにしてもあっという間でした。

 さらにこの会について調べてみると、突っ込みどころ満載です。まず過去の記事一覧を見ていくと、14ななみちゃんを救う会が設立され、翌日の1/5にその生存率を宣告されたそうです。わずか一日後。なんとも珍しい偶然です。まるで準備されていたかのようです。

 また募金が集まったことを知らせる新聞報道では「成長してから母親からの腎移植を受けるか、ドナーが現れるのをまって手術を受けるか決める」との記述があります。あれ?2月末まで持たないから募金、だったはずですが・・。実は成長して生体腎移植を待つだけの余裕があったようです。ちゃんとした事実を伝えずに募金を募っていたということになります。

 また結局あやかちゃん側は余った募金をななみちゃん側に寄付することはありませんでした。今回は両方募金が集まったから良かったものの、足りないところと余るところがあっては効率が悪いですね。それなら、一元化するほうが良い、と普通の人はすぐ思いつくわけで、それが赤十字であり、ユニセフなのです。読者の皆様も、使途のはっきりしない団体には募金しないようにした方がいいと思います。

 

 そういうことは頭で分かっていても、私も含めて、募金箱の前を無表情で素通りするというのは心理的にはつらいものがあります。

しかし、街頭募金という行為を経済学的に考えてみましょう。社会人は、働くことと、税金を払うことによって社会貢献をしています。

会社員であれば、所得税、消費税などを払い、それらは国によって社会福祉やODAなどにも使われています。われわれは国を通じて知らず知らずのうちに間接的に募金しているようなものなのです。もちろん、直接的には良い製品を作ってお客さんに喜んでもらったり、ものだけでなく情報産業、サービス産業もありますし、何らかの労働をすれば必ず直接的に何らかの社会貢献をすることになりますから、胸を張っていいと思います。それに対し、そもそも街頭で募金を集める行為、これは経済的には何の付加価値も生み出していません。お金を右から左に移動させているだけで、価値を創造していません(銀行も同じだろうと思う人もいるかもしれませんが、乗数効果という効果があり、それによってお金が増えているのです。)どうせ丸一日街頭募金で働く気があるのならば、引越しのバイトをして社会に貢献しながら、なおかつ全額募金すれば良いのです。



・街頭募金の功罪(3)ななみちゃんのその後

 これまで2回にわたって「○○ちゃんを救う会」について議論してきました。

その中で、「2月末に生きている可能性は1%以下!」と期限を決め、募金者をあせらせて募金を振り込ませるという最新のビジネスモデルを用いたななみちゃんを救う会を紹介しました。

その余命である2月末が過ぎた今、ななみちゃんの運命はいかに?

 ということでリンクを開いてみると、案の定、ななみちゃんは生きていました。

そりゃそうですね、成長して生体腎移植を待つだけの余裕があったことは既に新聞報道等で明らかになっております。

私はこの件についてななみちゃん側はどのように説明するのか興味があって、2月末が過ぎるのを待っていました。

 HP中の過去の記事によると、2/4の記事には、「主治医の先生と加藤先生が奇跡とおっしゃる位に腎機能が回復し、尿量も今までとは比較にならない位に出ています」とあります。

つまり、「2月末に生きている可能性は1%以下」だったのに、ここにきて奇跡的に回復した、といいたいようです。

この時点ですでに「七海は1%の壁を乗り越えて」との記述があり、2月末のXデーをにらんで早くも布石が打たれていました。

 その後は5日に1回程度HPを更新するぐらいで特に大きな動きはなく、そして本日、HP上の方にピンク色の文字で「2月末に生きている可能性は1%以下です!」と書かれていたはずの文字が削除されており、「皆様のお陰でななみちゃんはマイアミ大学で移植待機することができました。数々の困難を乗り越えてがんばるななみちゃんを応援ください。」と書き換えられていました。

 ということであっけない幕切れでしたが、生存率の話はいつの間にか忘れ去られ、普通に移植待機者として登録されたようです。大方の予想通りですね。そのうちHPもいつの間にか閉鎖されてしまうのでしょうか?余った3,800万はどこにいってしまうのでしょうか?

 

 そして最近、また新たな会が発足しました。まなちゃんを救う会です。よく次から次へと出てくるものです。こちらは心臓の移植が必要で、「心臓移植をしないと余命半年」だそうです。

期限を決めて募金者をあせらせ、正常な判断力を失わせた上でお金を振り込ませるという、募金詐欺業界における最新のビジネスモデルも当然取り入れています。ただし、今回は生存率の記述がありません。さすがにやりすぎと思ったのでしょうか?そう何回も何回も奇跡が起こっては怪しまれる、そう思ったのかもしれません。たしかに1%という数字は非常にインパクトのあるものでした。

 

 そのほか、会則もしっかりと組織的に整備されております。念のため内容を確認するとやはり「移植手術に関わるすべての費用を募金によって援助する」とあり、案の定、自己負担は0円のようです。これまでと違うところは、HPがブログ形式になったことぐらいでしょうか。

 さらに記述をよく見ると、6/28に生まれ、5ヵ月後に入院し、余命半年の宣告を受けたとありますから、この場合Xデーは4月末になります。あと2ヶ月しかありません。

「心臓移植しないと余命半年」ですから、たとえ2ヶ月間で募金が集まって移植待機者として登録されても、ドナーが現れるとは限りません。その場合、まなちゃんは死んでしまうのでしょうか?それとも、奇跡的に助かって移植を待つことができるのでしょうか?この問題についても、今後見守っていきたいと思います。

 

 いろいろと書いてきましたが、ななみちゃん、まなちゃん本人には何の罪もありませんので、二人とも無事手術が成功し、命が救われることをお祈りします。

 



心臓移植を早急に行わないと余命半年だったまなちゃん。Xデーである4月もとうに過ぎ、6月を迎えました。
当然ドナー提供者がそう簡単に見つかるわけはないまま奇跡的に助かって6月を迎えました。
その後、ホームページ上で動きがあるか見ていましたが6月9日に緊急手術の告知が行われました。
しかし、告知されていた移植手術ではなく冠動脈異常の手術です。この手術の経過次第で心臓移植をしなくてもすむそうです。
手術は成功したみたいですが、そうなると最初に呼びかけていた募金額の予算を大幅に下回るはずです。
度重なる奇跡が起こってよかったですね・・・


なお、この件について反論しているご本人からのコメントはこちらに記載されているようです。